2012.4.8 【谷川岳山行】日焼け止めを忘れずに

東京地方に桜の満開宣言が出された4月の週末。
我々は、まだまだ完全な雪山の谷川岳を狙う。
天神尾根から見た谷川岳
週末の天気予報では上越地方は、土曜日よりも日曜日の方が好天が予想される。
必然的に山行日は日曜日と決まる。

山行前日の土曜日。twitterを覗くと我々同様に明日、谷川岳に行かれる人がいて、その人から「午前中より午後のが天気は良くなります。肩の斜面は数珠つなぎになりますよ」との情報をいただく。
そんなに混んでるのかと半信半疑ながらも、天候については心強いお言葉であった。

Wikipediaによると
「谷川岳は群馬・新潟の県境にある三国山脈の山である。日本百名山のひとつ。周囲の万太郎山・仙ノ倉山・茂倉岳などを総じて谷川連峰という。
頂部は二峰に分かれており、それぞれトマの耳(標高1,963m)、オキの耳(標高1,977m)と呼ばれる。元来この山はトマ・オキの二つ耳と呼ばれ、谷川岳の名は隣の俎嵒(マナイタグラ)に与えられていた。しかし、国土地理院の5万分の1地図の誤記のために、トマ・オキの二つ耳が谷川岳と呼ばれるようになってしまった。」とのことである。
ちなみにトマは「手前」、オキとは「奥」という意味らしい。
写真は全てクリックで拡大します。
谷川岳はこれまで800名ほどの遭難者を出しておりギネス記録にも載るほどの遭難多発の山である。
今年も3月23日から4月27日までの36日間は雪庇の発達した尾根筋、谷筋は入山禁止となっている。
中央分水嶺のために天候の急変しやすいこと、豪雪による雪崩、日本有数のクライミング場であることが主な原因だが、谷川岳と聞くと怖い山というイメージが一般的である。

ただ、谷川岳の標高は2,000mに満たず、天神尾根等の尾根筋の一般登山道は、ごく普通の登山道である。
季節と天気を選びさえすれば、決して危険な山ではないと断言できる。
谷川岳ロープウェイを使えば1,300mまで一気に上がれてしまうこともあり、誰にでも楽しめる山でもある。
また、森林限界が1,600m程度ということで、比較的低い標高でも多くの高山植物が楽しめるのも魅力である。

昔。もちろん夏であるが、谷川岳を訪れた時はロープウエイを使わず、土合駅から昇って降りた。
標高差は約1,300m。結構、厳しい登山であったことを覚えている。
天候が悪く、下山は西黒尾根をそれこそドロドロになりながら滑るというか落ちるように下ったのが一番印象に残っている。景色の記憶は残念ながら皆無。たぶん、視界悪かったんだろうな~。

今回は、天神平までロープウェイを使い、天神尾根を経て、肩の小屋、トマの耳、オキの耳まで往復というプランである。夏のコースタイムで4時間程度という、残雪期では最もポピュラーなルートとなる。標高差は約700m弱と日帰り登山としても手頃である。

都内を未明に抜け、外環から関越道を北上。
夜明けの西の空には沈みかかった満月が白く異常な大きさで見える。
これほど大きな月を見た記憶はない。異常気象か?

高崎-前橋間では、上州三山はもとより蓼科山、八ヶ岳、浅間山そして北アルプスまですっきりとその姿を見せている。
何十回も通った関越道であるが、蓼科山から赤岳まで八ヶ岳がこうも綺麗に見えたのは恥ずかしながら今回が初めてである。
なかでも、すっぽりと雪を被った浅間山は雲ひとつなく今日の晴天を予感させた。
関越自動車道から浅間山が見える
水上で高速を降り、土合口へ向かう。
途中、上りの坂道カーブでチェーンを装着したにもかかわらず車が180度回転するというアクシデントをなんとか乗り越え、8時過ぎに谷川岳ロープウェイ土合口駐車場に到着。
土合口駐車場
駐車場で装備を整え、一気に天神平1,310mまでロープウェイ(往復2,000円也)で上がる。
谷川岳ロープウェイに乗る


午前9時。気温0度。積雪4m。晴れ。
天神平は、リフト待ちのスキーヤーとボーダーでひしめいていた。
もちろん、雪山装備の登山者も多い。
天神平に到着

我々もアイゼンを装着。まずは天神山の尾根を目指し、登り始める。
道標がロープ沿いにしっかり立っているが、ロープの内側はスキーゲレンデとなっている。

天神尾根に向かって登り始める
40分ほど昇り、尾根へ出ると展望が一気に開ける。
これから目指すトマの耳、オキの耳も見える。なかでも俎嵒が圧巻だ。

これから行くピークを仰ぎ見る
雪山に来たんだとの実感が湧いてくる。
今年に入り、八ケ岳、大菩薩嶺、赤城山と雪山を登って来たが、今回はその締めくくり山行という位置付け。
天気も味方し、絶景を堪能する。
まだこの時間では頂上付近には雲が沸いている。
まあ、これも時間が経てば晴れるだろう。と楽天的に予測。

これから行く肩の小屋への道には多くの登山者が行列をなして登っていくのが見える。
昨日教えていただいた通り、数珠つなぎである。



天神尾根を進む。
結構きつい登りとなるが、多くの先人たちのつけてくれた踏み跡がきっちり残っており、歩き易い。
天気は確実に好転し、ほぼ快晴となる。
天神尾根のなだらかな雪面と青空のコントラストに目が眩む。


11時半過ぎに肩の小屋に到着。
多くの登山者が休憩・昼食を摂っている。
我々も小休止ののち、装備をチェック。
稜線の風と寒さに備え、アウター等を着こみ、せっかく持ってきたのでストックをピッケルに持ち替え、トマの耳を目指す。

10分ほどで、第一の目的地トマの耳(1,963m)に到着。
まずはオキの耳を眺める。



オキの耳への稜線の雪庇の張り出しが見事である。
この景色を見たい!というのが谷川岳を選んだ理由のひとつでもあった。

結構人が多いので周囲の絶景を一渡り眺め、オキの耳へ。
15分ほどでオキの耳(1,977m)の絶頂に到着。
本日の最終目的地完登である。


気温は-4℃。ほぼ無風。快晴。
谷川岳頂上は我々の足の下にあった。

一の倉沢に覆いかぶさる雪庇は美しいが不気味である。
この稜線に張り出した雪庇の大きさと迫力には圧倒された。
トマの耳を見ると多くの登山者が、微妙なバランスの山頂に立っているようにも見える。

快晴への感謝と山頂に立った達成感を味わいつつ記念撮影。
ここでなんと昨日twitterで情報を頂いた人にお会いできる。
おまけに写真も撮って頂きました。綺麗に写ってます。ありがとうございました。
彼はこの山頂までボードを担ぎあげている。
帰りは、天神尾根から熊穴沢を滑降する模様。ちょっと羨ましい。





一方、我々は自分の足で降りるしかない。
下りは写真を撮りながらのダラダラ下山となる。
何回もS君を待たせてしまう。
まいっかと思いながら、トマの耳への稜線、シュカプラ雪の風紋、エビの尻尾等の雪山ならでは写真を撮影しつつ、のんびりと歩く。







午後1時過ぎに肩の小屋まで戻り、遅い昼食とする。
薄着であることもあり、結構寒い。
昼食におにぎりを用意したのだが、あまりに冷たいので一個食べるとお腹が冷え切る。
スープとコーヒーで体を温める。



いきなり、S隊長が「ちょっと偵察に行ってくる」と肩の広場の反対側に向かう。
大きな雪の張り出しの向こうに越後三山が見えるとのこと。
雪原をトラバースして付いていくと、越後三山、尾瀬、日光方面の山並みが見事だ。

越後三山方面

燧ヶ岳と至仏山

日光白根山と皇海山方面

午後2時。下山開始。
雪原を降りて行く。
少し、登山道を外れたため、膝までの積雪に足をとられるが、これもなかなか乙なもんです。
依然快晴、全方位雪景色は尽きない。
快適な雪山縦走が続く。
天神尾根途中のスロープをボーダーが滑って行く。
熊穴沢方面へ何本もシュプールが伸びている
そして、あのTwitterさんも格好良く滑っていく。

アイゼンを履いた我々は、それを横目で見ながらひたすら降りる。

ふと、我々の周囲に人が消えたことに気づく。
あれだけ多かった人々はどこへ行ったのであろうか?
今は我々の前後、かなり遠目の位置に数パーティが居る程度である。
ちょっと不思議な感じがするも、我々がゆっくりと昼食を摂っている間に降りてしまったと結論する。
もしくはみんな滑り降りてしまったのか?

肩の小屋から30分ほどで熊穴澤避難小屋付近に到着。
避難小屋は見当たらない。来る時にも見当たらなかった。
標識あるいは目印、もしかしたら煙突が一本立っているだけだ。
この積雪の下に避難小屋は埋まっているのだ。
小屋1棟埋没させてしまうほどの積雪ということです。
いずれにしろ、冬季はここには避難できない。

小屋はこの下らしい

この後は立派な雪洞を見つけたり、谷川岳絶景ポイントで写真を撮ったり、ショートカットで雪壁を滑り降りたりしながら、3時半に天神平に到着。
谷川岳雪山山行を無事に終える。





谷川岳にはいろんな人がいた。
ゲレンデスキーヤー、スノーボーダー、山スキーヤー、テレマークスキーヤーは言うに及ばず、スノーシュー装着者、ワカン履き、雪中訓練者(滑落停止訓練)、ガイド付きアンザイレン組、雪洞掘り、そして我々のようなアイゼン履きの登山者。
それぞれがそれぞれのスタイルで快晴の谷川岳を楽しんでいた。
それだけこの山の懐が深いってことでしょう。

ひとたび荒れれば魔の山に変わる山でもある。
もしも冠雪直後であればシビアなラッセルを迫られる。
風が吹けば容易に登れる山ではない。
天候が急変すればたちまちホワイトアウトとなる。
我々も、もちろんそういう事態も想定して来ている(ホントか?)が、本日の快晴には本当に感謝である。
谷川岳さんありがとうございました。


下山後は恒例となった温泉(湯テルメ・谷川)でゆっくりと疲れを癒し、今度は180度回転することなく帰宅の途に着いたのであった。

次の山行は、GWに西穂高ですって。
「S隊長。独標までということでお願いします!」



最後に今回の反省。
この冬新調した冬用山靴はだめ!!
4回目の山行でも足が痛くなる。もう履き慣らしの段階は超えました。
とくに左足の小指付近の当たりは尋常ではない。そこを庇い過ぎたため右足の膝を下山時にやられた。
下山時最後のワンピッチはカニの横ばいみたいな歩き方で、だましだましって感じでした。
修理ができなければ別のを購入することとする。
更なる反省点。
それは快晴の雪山の日差しを舐めていたこと。
朝方の日差しはさほど強くなかったことから、日焼け止めを適当に塗ったため、顔の皮がむけてきてボロボロ状態。
登山翌日は、きったない真っ赤な顔で会社に行かざるを得なかったのでした。
一言言いたい「ゴルフなんか行ってねえよ~~だ!」

<山行記録>
日程:2012年4月8日(日) 日帰り
同行者:Sさん、Hさん
天候:晴れのち快晴


当初計画:天神平(9:20)⇒熊穴沢避難小屋(10:15)⇒肩ノ小屋(12:00)⇒トマノ耳(12:15)⇒オキノ耳(12:45)⇒昼食⇒トマノ耳(14:05)⇒肩ノ小屋(14:15)⇒熊穴沢避難小屋(15:15)⇒天神平(16:00)

コースレコード:天神平(9:23)⇒熊穴沢避難小屋(10:15)⇒肩ノ小屋(11:41)⇒トマノ耳(11:54)⇒オキノ耳(12:22)⇒トマノ耳(12:50)⇒肩ノ小屋(12:57)⇒昼食⇒熊穴沢避難小屋(14:39)⇒天神平(15:39)


実歩行時間:3時間48分

この稜線もいつの日か歩いてみたい